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ももクロ 夏のバカ騒ぎ 桃神祭。遊びの天才、玉井詩織はどんな祭りを作りたいのか。

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今頃になってももクロ 夏のバカ騒ぎ 桃神祭、観戦記。全体としては、祭りという軸で、楽曲のアレンジ、構成、演出を全て貫いていた。細かいところまで追求していた。テーマ性の持たせ方は全く違うけれど、一本の強い軸につながるという意味では、五次元、GOUNNツアーの様だった。楽曲が新しい装いをまとい、演出の各所が祭り仕様になっていた桃神祭。祭りだからこそ次の展開を求めてしまう 桃神祭 “Version 1”だった。

桃神祭を振り返っていたら、玉井詩織のことばかりになってしまった。遊びの天才、玉井詩織はどうやって人を遊びに組み入れていくのか、そして玉井はどんな祭りを求めているのだろうか。

玉井詩織は、天才肌で何でも器用にこなしてしまうので、アイドルらしい成長物語が見えにくく、感情移入がしにくいと言われることがある。そのせいもあってか、玉井推しの自分にとっても昨年までのライブでは、玉井詩織が突き刺すような印象を残すことはあまり多くなかったように思う。けれど、昨年のパンナコッタ、今年4月のAEイベントなど、玉井が強く印象づけられる場面を見るようになってきた。今回のライブ、キーパーソンは玉井だった。玉井推しだからそう見えるのかもしれないけど、最近の玉井詩織は目が離せない。1年前の百田夏菜子のようだ。

 

また長ったらしいのですが、こんな内容です。1-1 〜 1-3が一番言いたいこと。2-2、2-3はライブの演出面について。2-1はやっぱなんか書いておこうと。

ブックマーク、tweetなどいただけると嬉しいです。

  1. 桃神祭全体
    1. 桃神様への違和感と、玉井の遊び心
    2. ももクロの「人と繋がる ちから」 ;今回のライブで見せた“人たらし”さを分解する
    3. 祭りだからこそ感じる「もっと、もっと」感

     

  2. それぞれのこと
    1. 2日目の虹〜「奇跡なんかは待つものじゃない」 ;構成変更の裏側を想像する
    2. 祭りを作り上げた演出   ;演出面について
    3. 祭りを作り上げた曲の装い ;曲のアレンジなどについて

     

桃神様への違和感と玉井の遊び心

「神様」に違和感

日本の祭りをテーマにした2014年夏のバカ騒ぎ 桃神祭。両日ともライブビューイングで観戦。

三峯神社での神聖で厳かな雰囲気のオープニング映像。そこへ「桃神様?ライブの神様って感じ」というVTR。 メッセージ性を持たせない夏の「バカ騒ぎ」ライブ。そこにテーマ性が示された感じがして、うまく入り込めなかった。“祭り”だけであったり、彼女たちから自然発生したものなら、躊躇なく入り込んだかも知れない。けれど突然「桃神様」が現れ、違和感が生まれた。

これまで、ももクロが大きなライブで仕掛けるファンタジーは、あえて「わざとらしく」「チープ」な作りになっている。ももクリ2012のネバーランドとそれを壊す悪役、2011極楽門の戦隊ヒーローショーのように。考えてみれば「代々木公園の猫たち」の時から、チープでインチキ臭かった。そういうの、大好きです。 代々木公園くらいのサイズ感であれば何も考えず楽しめる茶番。けれどそのチープさも、仕掛けがでかくなると、バランスを欠いて「空々しく」なることもある。これが、メッセージ性のある春や冬のライブであれば、「物語」が空々しさを凌駕するのだが、夏は違う。夏菜子も言っているように、バカ騒ぎは「本当に楽しむだけ」なのだ。 ※川上アキラ著 「ももクロ流 5人へ伝えたこと 5人から教わったこと」 三峯神社がもつ空気感からだろうか、詳しく知らない僕でも何かしら大きな力を感じてしまった。さらに「桃神様」が突如現れたものだから、僕の頭はあれやこれやと動き出してしまった。“Don't think. Feel!” できなかった。「急に神様って言われても…」って思ってしまった。

と、桃神様に入り込めないところに持ち前のへりくつが加わり、頭の硬さはダイヤモンドを超えていった。

玉井詩織のバランス感覚で、緩むネジ

そんな僕の固い頭のネジを緩めてくれたのは、いつもの“玉井煽り”。 VTRの最後に玉井詩織が、「日本最大の夏祭りになるでしょって言ってんの!ももクロが、ももクロが言うんですよ。みんな、ももクロ好きでしょ!。…ほら。ももクロがいれば、最大の祭りになること間違いないでしょっ!」と笑顔で語りかける。

そういえば「ももクロ2013」でも、玉井の「隣の人が寝そうになったら起こしてあげて下さいね」の一言が、僕の“現地とLVの「温度差」不安”を吹き飛ばした。

玉井は、「みんなももクロ好きでしょ!」はいつもと違って、少し照れたようで、はにかんだ感じに見えた。これが意図したものか、玉井が自然と感じ取って出てきたものかは分からないけれど。言い切っていないところに、普段のVTRや煽りとは違う感覚を覚えた。

これが良かった。

玉井詩織は、かっちりそしぎた型や設定があると、少し照れてしまうところがある。自分だけにスポットが当たった瞬間にもそうなるが。

彼女が自然とたずさえていた、“真正面からどーんをぶつけてこない雰囲気”に、少し気持ちがゆるんだ。

ももクリ2013のVTRもそうだが、この気持ちの「緩み」を作るためにおそらくOP映像は玉井詩織で締めくくるのだろう。煽り担当、という理由だけではないはずだ。

ライブ全体のテーマやメッセージを示しつつも、のめり込みすぎない感じを醸しだして、楽しめる余地を作るっているように思う。大きなテーマ性と、インチキ臭いチープさを、同時に見せてくれる感じ。

ど真ん中ばかりでは、遊びや笑いは生まれない。意味のないものや、くだらないものが欲しくなる。タモリ的に言えば、「やる気のあるヤツは去れ!」の感覚。「茶番的ファンタジー」、アマチュアリズムのバランスを持っているからこそ、新鮮さが続く。

百田が長嶋茂雄なら、玉井はタモリなのかもしれない。詩織推しの偏見か。

と、気が付くと玉井詩織の話ばかりになっている。

そうそう、この「くだらない茶番」が何よりはじけていたのは、歌の途中で屋台の食べ物をほおばるところだ。みんなの姿が楽しいのだけれど、こういう場面が一番似合うのは、玉井。こんな事ももクロくらいしかやらないし、ももクロらしかった。

ももクロの「人と繋がる ちから」

いろんな世代が集まるバカ騒ぎ

2日目、会場の観客に年齢を聞く流れになり、いろんな世代が参加していることが分かる。

 

百田;いくつになっても、いろんな世代がいろんな場所から集まってきてバカ騒ぎできる環境をずっとずっと作っていきたいって思うよね。

高城;つくろうよ!ついてこいよ!

玉井;リーダーの重荷がとれた瞬間に、一気に大口叩くよね。

百田;最年長の高城さんが踊れる歳まで踊れる確信がある。

すでにいろんな世代と繋がっているももクロがいるけれど、今回、新たに繋がった人がいた。

花柳先生と仲良しになる仕掛け

2日目のバンド紹介の時間、花柳先生がステージに登場したことに驚いた。花柳社中は昔から知っているが、玉井がLVメッセージで「人前に出ることは滅多にないんです」と言っていた通り、代表の人を見るのは初めてだった。

そしてもっと驚いたのは、ももクロと先生がすでに仲良しになっていること。メンバー紹介を追えて変える花柳先生に、高城が「バイバイ」と声をかけていた。その後のLVメッセージで、ももクロバンド、松崎しげる、コロッケに加えて、花柳先生もいたが、みんなが“ももクロチーム”の一員になっている雰囲気だった。

なんで、こんなにファミリー感があるのだろうと思っていた。それは8月6日のももクロChanで分かった。

ももクロChanでは、恒例のウォーターガンのリハーサルのために用意された水鉄砲で、花柳先生とメンバーが遊ぶ様子が映されていた。

「やりたい!やりたい!」という花柳先生がなにより素晴らしいが、そこで一緒に遊ぶももクロチームもいい。

よく考えれば、ウォーターガンのリハーサルのために、ハンディ水鉄砲はいらないのではないだろうか。ファンタジーをほじくり返す野暮をしたいわけではない。チームとして一体になるために用意していたのではないかと感じて見ていた。

花柳先生まで水鉄砲で遊んでいたから、ステージから花柳先生が帰るときに、高城は「バイバイ!」と言ったんだ、と分かった。このときから関係は築かれていた。

「一緒に遊ぶ」ってこういうことだ

芸事に真摯だということは当然ながら、チームみんなでワチャワチャすることがチームの力を高めていると感じた場面。

ただワチャワチャするのではなく、「一緒に遊ぶ」ことで一体になっていく場面があった。このときの玉井は見事だ。

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水鉄砲で遊んでいると、花柳先生が「やりたい!」と無邪気に駆け寄ってくる。メンバーを追いかけていた玉井が気づき、身体をねじって先生の元に行き、水鉄砲を渡す。

凄いなあと思ったのは、この先。

水鉄砲を渡した後、まだ先生が構える前から、狙ってくれといわんばかりに、おどけて花柳先生の前に出て逃げていく玉井。

自分が逃げることで、相手にも遊びの「役割」が与えられ、お互いにその役割に“はまる”。この瞬間、仲間になる。こうやって人は繋がってく。

ああ、友だちと仲良くなっていくときって、こうやって遊ぶんだよなあって思う。仲良くなるってこうやるんだったなあって。

切り出してコメントしてみた。

 

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  ↓

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「バイバイ」という高城もそうだが、百田、玉井、高城の“人たらしぶり”が ももクロの力だろう。百田はスタッフに容赦なく放水し、自分がかけられて「もう、最悪!」と騒ぎ、その場の雰囲気を盛り上げる。高城は、「(花柳) 先生、行くよ!」と事前に声を掛けるという優しさを持って水を掛ける。それぞれに人と繋がるちからがある。

ライブ最後のバンド紹介の時間は、賛否あるようだが自分は好きだ。チームの繋がりが観客からも見える場面だから。

2日目LV向けメッセージに、人と繋がるちから。

2日目のLV向けメッセージでも、もももクロが人と繋がる力を見れた。

高城が、普段はカメラの後ろにいる演出の佐々木敦規(あつのりん)を呼び込んだ。

「開演前泣きそうだった」というあつのりんに、高城は「今、別の意味で泣きたいでしょ」といい、玉井は「この方、天才なんです!」といじり倒す。

開演が遅れ構成変更で大騒ぎだったスタッフ全員を、観客が見ている場でねぎらうかのように、笑いを交えて裏方リーダーの佐々木敦規に光を当てる。高城がももクロの母性だと言われるところだろう。

そんな良いことしておいて、最後には1日目と同じく、高城が百田の服に氷を入れ、大騒ぎで終わっていく。「いつものももクロ」で締めくくられた。

祭りだからこそ感じる「もっと、もっと」感

祭りなら一緒に踊りたい

桃神祭は全編通してお祭りだった。セット、構成、楽曲のアレンジ、屋台。そしてお祭り隊に盆踊り。

お御輿の上で歌った「行くぜっ!怪盗少女」は、お祭り感満載だった。

お神輿を担ぐ人に、乳児を抱っこ紐で抱えている女性がいた。それを見たときに、なんかいいなあと思った。論理的な説明はできないし、この感覚は突き詰めると間違っているのかも知れないのだけれど。“土着だなあ”と感じた。自分が子どもの頃に出かけていった祭りという感覚。

それを見たからか、2日目の「ワッショイ」コールには涙してしまった。LVであっても、「お祭りを一緒にやっている」という感覚があった。

* *

けれど、「祭り」と「ももクロ」が、まだまだ“別々”だという部分も感じてしまった。

映画館のLVだからという影響は大きいだろう。現場にいたら違う感覚を持ったかもしれない。

現場では盆踊りの時に踊っている人はいた。けれど、現場にいてもその場で練り歩いて踊るわけにはいかない。自分の席で上半身だけで踊るしかない。

贅沢なことだとは思うけれど、全国から祭りを盛り上げるチームが登場したとき、盆踊りが流れたとき、「ここにももクロがいたらなあ」と思った。

なぜ祭りなのに、一緒に踊れないんだろうって思っていた。

もしできるなら、ももクロがいるやぐらを囲んで、みんなで練り歩いて踊りたい、って思ってしまった。

何万人も集めてそうそうできることじゃないのは分かっている。大混乱になるだろう。けど、それがやれたらどんなに楽しいだろうと思ったイベントだった。6万人で盆踊りできるような「バカ騒ぎ」ってどんなものだろう、と思いながら見ていた。

彼女たちほどの人気者と一緒の場所で盆踊りをするなんて、そうそう無理なことだとは分かっている。けれどそれがしたくなってしまう演出だった。

もともとももクロのライブは、それ自体が「お祭り感」で溢れている。今回の「お祭り」は各地のお祭りとももクロの祭りが足し算されたものだったけれど、2乗3乗と掛け合わされてもてもいいのではないだろうか、なんて勝手な期待を持った。

「お祭り」という空間・演出だからこそ感じたフラストレーションがあった。LVだからなのかもしれないけど。

この曲はこのアレンジで聞きたいとか、曲ぶった切るなとかいう観客の希望を完全無視していいから、ももクロと一緒にChaiMaxx音頭を踊ってみたかったりしたんだよなあ。

祭りとしては、もっと楽しくなれるんじゃないか。楽しいからこそ、そんな思いを持った。

「もっともっと楽しい祭りを主催しないといけない」

祭りとしての「もっともっと」。それを一番感じていたのは玉井詩織なのかもしれない。後から振り返って、勝手にそう思った。

玉井はたしか、最後にこんなことを言っていた。

「この夏祭りを知っちゃったら、もっともっと楽しい祭りを私たちが主催しないといけないんじゃないかと思ってきたので、これからも夏のバカ騒ぎを皆さんと一緒に楽しめたらいいなと思います」。

当然ながらあれが完成型ではないと彼女自身思っているのだろう。それはスタッフ含めて、高みを目指すももクロチームなら、みんな感じていることだろう。もうすでに次を見ているはずだ。

* *

嵐のDVDを持ってきて国立競技場でのライブが夢になり、雨のライブもしてみたいと語っていた玉井。

国立ライブのパンフにも、「晴れるにこしたことはないですけど、逆に雨が降ったら、それはそれでみんなの思い出に残るかなって」とある。

おそらく今回のライブパンフの写真をTwitterで見かけたが、そこにも「雨の中でやってみたいんだよね(笑)」って。

玉井:雨の中でやってみたいんだよね(笑)

玉井詩織のこの発想の自由さが、ももクロらしさの大きなパーツを構成しているんだなと感じる。

玉井詩織の頭の中では、こんなお祭り〜行きたくてウズウズする…世界各地の壮大なお祭り・フェスティバルいろいろ〜でもイメージされているんだろうか。

佐々木彩夏は、浜崎あゆみなどのライブを見て、こんなライブがやりたいという具体的な形がイメージとしてあるだろう。百田夏菜子は、「伝える」という部分で遠くを見ているだろう。

具体と抽象の見方をする2人。けれど玉井詩織は、何をどこからどう見ているか分からない。それが面白い。

本当のお祭りの主催者に

去年の春の一大事、夏のバカ騒ぎライブを見たとき、ももクロは、何でも入れられる箱(ジャンル)〜去年の記事〜になろうとしていると感じた。

フェスを主催するのが、ももクロ流エンターテインメントライブの一つの形ではないかとも感じた。もっというと、ニコニコ超会議的。その一つの形としての「お祭り」。

テシロパークは、待ち時間を過ごし、周辺地域の混乱を防ぐ意味合いもあるが、すでにフェスっぽい。

これからの「ももクロフェス」、「ももクロ祭り」を考えると、楽しい。

*  *   *

ここからは、ライブの内容を振り返る。

2日目の虹〜「奇跡なんかは待つものじゃない」

2日目に触れておかなければ。

本州は雨雲に被われ、各地からイベント中止の報が聞こえてきていた。雷もあり、開催も難しいかも知れない。

雨雲がいつ会場に到達するのか、居座るのか、過ぎていくのか、雷にはどう対処するのか。開演と雨雲が近づくと、川上マネジャーのTwitterからこまめな状況報告が届いた。そんななか「開演は遅らせるが、中止はない」という知らせ。後で知るが、イベント開催の安全性について気象庁とも話し合っていたとのこと。

LV会場も21:30まで押さえているという川上マネジャーの発言に、LV会場も安堵した。LV会場は雨に降られることもないのだが、これらの情報によって、現地と繋がったライブ感があった。LVでも、1曲目から爆発的な盛り上がりだった。

開始を1時間遅らせ、内容を一部変更して短縮するというアナウンスに、「直前の構成変更で裏側はてんやわんやだったろうなあ」と想像していた。雨の中、今日も天手力男で始まるが、高城の表情はガチガチだった。DNA狂詩曲、Y字路の立ち位置もずれていたほどだから。

4曲を歌い終えると晴れ間が見え、大喜びで抱き合う5人。このときの高城は、緊張がほぐれて崩れんばかりの笑顔。MC中、ずっとワーキャーワーキャーしていたので、そうとう圧迫した想いがあったんだろう。

ライブが途中で中断するかもしれないと聞かされ、有安は「胃がもぎとれそう」と語っていた(めざましテレビ 7月30日)。誰もがとてつもない緊張感の中のライブだったんだろう。そこで百田の渇入れ、「雨だぜ フォー!テンション上がるぜ フォー! バカ騒ぎだぜ フォー!」夏菜子さん、男前。

MCを減らしても楽しさは減らない。

打合せで用意していたはずのMCの流れをいったん捨てて、曲に入っていく。こういう瞬時の対応力が彼女たちの本領発揮の瞬間。

現地もLVも「ニッポン笑顔百景」では、1日目より「ワッショイ!」コールが大きく聞こえたのは、気のせいだろうか。自分が躊躇なくお祭りしたからだろうか。ワッショイ、楽しかった!。この歌があって良かった。

「黒い週末」では、あいかわらず食べまくるメンバー。有安も食べる。玉井は焼きそばを本気食い。さすがばくばくモンスター。ふだん百田は佐々木を抱えるが、この日は高城。高城は、百田の首筋を触り返すし、その後二人はハグ。高城は わた飴でケチャ。ギターソロで出てきたDAITAの肩に腕を載せちゃう佐々木。なんというエンペラーっぷり。ももクロらしさの集大成。

MCを減らしてテンポアップしたからと言って、いつものMCの楽しさは少しもなくなりはしなかった。

自己紹介のMC、楽しかった。「ももクロのわたあめ少女」高城れに。「ももクロの雨女」佐々木彩夏。「バクバクモンスター」玉井詩織。「水不足だったけど水が足りた」有安杏果。「ハタチの人ー!」百田夏菜子

その後「ツヨクツヨク」が流れ、ヒートアップしたまま「ChaiMaxx」になだれ込む。あーりんの煽りでさらに高ぶる。ネジがはじけ飛んだ。

構成全体がテンポアップしたことで、祭り感は高まったのかもしれない。

構成変更の裏側を想像する

1日目に盆踊り&衣装チェンジをした幕間パートは、2日目は衣装チェンジもカットしてMCになった。「My Dear Fellow (MDF) で幕間に行かずに、ニッポン万歳 へと続いた。

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桃神祭 2日間のセトリ比較表

 

7月30に流れた桃神祭の舞台裏(めざましテレビ)では、振付の石川ゆみが「ツヨクツヨクまでは変わりません」、玉井が「普通にChaiMaxxやって…」と言っていた。8月1日の梶原放送局でスターダスト A&R佐藤守道が、「着替えをやめて、メインステージにいながら本人たちが動きながらできることはなにかということを、やりました」という発言している。

サブステージで「MDF」を歌ったあと、メインステージに戻るために「ももクロのニッポン万歳!」を「NEO STARGATEの前に置いたことが分かる。

佐藤によると、「ももクロ音頭」をやめたのは “1分でも長くお客さんの前に本人たちがいる”ことを重視したから。そして石川ゆみの意見として、“大きな変更もやってやれない子たちではないが、演出の佐々木敦規が祭りとして作ってきた流れを崩さないでやる”という方向性を、ギリギリまでかけて組み上げたそうだ。

全体としてはMCと盆踊りをカットし、衣装替えをせずに「ニッポン万歳」で後半にむけてステージを移動したようだ。

曲は1日目と比べると2曲少ない。一つは「月紅」だろう。「ネオスタ」後の曲をカットし、新曲に関するMCもカット。「MDF」の前も変更しているかもしれない。1日目ネオスタの後、「LOST CHILD」があった場所には、「BIRTH ø BIRTH」が準備されていたのだろうか?

「奇跡」を感じさせるドラマをつくるもの

虹をみて、やはりももクロは「持ってる!」と感じた。“奇跡”、“伝説の” と言いたくなるほどの出来事。LVの自分でさえも、気持ちは上がった。

けどあれは、スタッフが天候を読んで開演を1時間遅らせ、観客の安全を考えてこまめに誘導し、構成を急遽変更し、メンバーも急遽対応したからこそ生まれたものだ。構成も、中盤で大きく変えている。MCや曲振りもコンパクトにしている。

まさに「♪奇跡なんかは待つものじゃない」(MDF) だった。高城が「モノノフはストーリーを作るなあ」と言っていたが、奇跡を感じられるドラマを作るのは、自分たちのやれることを精一杯やることでしか生まれないのだなあ、と感じた。

だから、観客は精一杯バカになって応援するんだ。

祭りを作り上げた演出

Ⅰ日目に戻って、バカ騒ぎで魅力的だったことを書いておこう。

ももクロらしさの極地 「黒い週末」

オープニングでその大きな姿を見せた神社。石見神楽、岩手虎舞も凄かったが、和楽器の存在感。太鼓、三味線、横笛の音と掛け声が聞こえてくると、気持ちは盛り上がって行った。

去年の日産でも和太鼓はあったが、スパイス的であり、ここまで楽曲の中心には座っていなかった。全体を通しても、三味線がクリック音・電子音のようでもあり、打ち込み主体の原曲サウンドイメージとうまく溶け合っていたように感じた。最初の生バンドから、徐々にアレンジが進化しているのは素人の僕でも分かる。

なによりネジがはずれたのは、M3 黒い週末。本物の屋台があって、歌っている間にかき氷、焼きそば、ラムネ、リンゴ飴を食べる。「ゴリゴリのロックチューンなのに、歌も歌わないで食ってるし!こういうの大好きだー!」と、幸せを感じていた瞬間だった。

こんなことはももクロくらいしかやらないし、ももクロらしい。コレが見れただけで、良かったと思える演出だった。何者かが「わかんない」のがももクロ、ということが垣間見えた。 そうそう、このあとの自己紹介でも食べ物をほおばっていた。

そして「D'の純情」への入りが、かっこよかった。曲前でセットした時の指は、自分の記憶にある“伸びた三本指”ではなく“Dの形”がスクリーンに映し出された。忍者となって屋敷に忍び込むPVの世界観が、この神社セットで完成された感じがした。和楽器とのマッチングも見事。

汗だくが美しい

1日目、現地は観客がダウンするほどの暑さだったと聞く。LVで大きく映し出される彼女たちは、開始直後にもかかわらず、尋常ではない汗をかいていた。1日目は衣装が重厚で、余計暑いのではないかと思っていた。ただ、本当にもう、笑顔で汗だくで踊る彼女たちは、輝いていた。

佐々木彩夏が国立のパンフで「やっぱりライブっていうと、汗かいて、ぶっ倒れるくらい踊って完全燃焼するっていうイメージがあるから」と言っていたのだが、まさにその通りの状況。本当に大変だったことだろう。2日目に衣装が軽めになっていて、すこし安心した。

自由度の上がる堂々平和宣言

堂々平和宣言 は、ここ最近の楽曲としては、パフォーマンス込みで一番好きな曲だ。

サングラスを掛けた瞬間に彼女たちがキャラ変し、それまでの何かから解き放たれ、一気に自由度が増すからだ。

2日目は、上演時間を減らす関係で、堂々平和宣言に入るサングラスのくだりが超短縮バージョン。これをを見ると、1日目のが間延びして見えるほど。ももクロにまだ慣れてない観客に対しては、前振りをして丁寧にやる必要があるのかも知れないけれど、結果的にこのテンポで良かったんじゃないかとさえ感じた。

演出での盛り上げ

バカ騒ぎ「ココ☆ナツ」、アリーナの特権だった客席への放水が、カメラも向けられた。LV組は当然、大盛り上がり。かけるときの彼女たちの表情も5人5様で見事だった。悪童ぶりが可愛い夏菜子。即座にど真ん中を射貫く詩織。放水中の勢いに振り回されるのが愛い彩夏は。ハートマークに投げキッスと、サービスたっぷりな杏果。なかなか狙いが定まらないのも可愛い れに。

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ペアのいる演出。観客の近く ⇆ 5人揃ったパフォーマンス

「DNA狂詩曲」は、3B-Jr.の子たちとペアになって歌っていたのが素敵だった。どの曲もそうなのだが、ももクロはメンバーどうしが近くにいて歌ってほしい。けれど大きな会場だと立ち位置も離れてくる。ここはジレンマだ。

「キミといるだけで なんか遺伝子が笑う」と歌うこの曲に、ペアがいることの意味は大きかった。“観客の近くまで行くのか” ー“ 5人の関わりを見せるのか”。ライブのたびに感じる葛藤に対する一つの答えかもしれない。

自分を解体するメタ視点のももクロ

ももクリ発表は、コロッケのものまねでサプライズ自体を笑いに仕立てた。会場の規模や動員数が共有できる目標ではないからなのだけれど。

絶えず自分の足下から解体して変えていく自己変革がももクロの身上だけれど、この辺がまた“メタ視点”のももクロらしい。自分たちのやってきたことをネタにして茶化してしまう。その最たるものが、AEイベントの「俵安」。

祭りを作り上げた曲の装い

曲の装いを変えて表情を新たにしたアレンジと見せ方

祭りチームが会場を埋め尽している時間、BGMは「ももいろパンチ」と「ピンキージョーンズ」の和アレンジが流れていた。ももパンはもともと和がテーマの頃の楽曲だし、PJは楽器が多彩な曲。楽しい音だった。

「キミとセカイ」の見事なバンドアレンジ、DAITAのギターソロで始まる「サラバ、愛しき悲しみたちよ」。後で知ったが、DAITAが原曲の良さを活かしつつ自分なりの味付けをする、綿密な準備があったそうだ。

佐藤守道: ももクロの原曲に対するリスペクトをすごくして頂いていて、ここはこういう風に弾いた方がいいとかというのはありつつ、その中でDAITAさんとしてのキャラクターを出して弾くところを、うまく使い分けてというか。ある意味、ひとつ、ももクロ的なバンドのあり方の理想というか。   ~梶原放送局 #72 8月1日

1日目で驚いたのが、「CONTRADICTION」から、息もつかせず「泣いてもいいんだよ」が始まったところ。あれだけ激しく踊った後で、低く力のあるミディアムテンポの歌い出しに繋げられることに驚いた。

「走れ!」。2013年春の一大事で初めて聞いたバンドバージョン。暗くなった空に溶けていくようなイントロは、以前よりもややスローテンポで、印象を深化させていた。

アンコールをはさんで、和楽器アレンジの「行くぜっ!怪盗少女」と御輿に乗ったももクロ。前奏がつかめず、MIXコールのきっかけがつかみずらかったものの、思いのほか和楽器アレンジがあっていた。津軽三味線の強烈なアタック音が、この楽曲の打ち込みテイストとあっていたように感じた。

1日目の「鋼の意思」は移動曲で使われていて、「なるほどなあ、こういう活かし方があるなあ」と感じた。この曲は上半身だけの動きが中心でメンバー同士の絡みの少ない振り付けなので、トロッコの上でも違和感がない。

 

* * *

 

最後に。

 

今回は、演出面、楽曲面、どちらも力の入ったバカ騒ぎだった。

今までにない演出が一つひとつ積み重なって「お祭り」になっていた。新しいアレンジや演出によって、楽曲の新しい姿が見えたライブだった。

「夏のバカ騒ぎ」なので五次元やGOUNNツアーのように、一つの深いテーマに繋がるように配置されたライブではない。けれど、たくさんの楽曲が「お祭り」という軸で、繋がっていた。

プロ相手にこんな言い方をすると失礼になるけれど、ももクロはメンバーもスタッフも含めて、絶えず変化し成長していくのだなあと実感した「バカ騒ぎ」だった。当然、見ているこちらも変わっていくのが面白い。